入れ歯がつくれない?|名古屋市北区の歯科・歯医者|城北歯科医院・矯正歯科|土日診療

〒462-0026名古屋市北区萩野通1-37
TEL.052-914-1040
  • 緊急随時対応

  • 求人案内

052-914-1040 WEB予約
ヘッダー画像

入れ歯がつくれない?

入れ歯がつくれない?|名古屋市北区の歯科・歯医者|城北歯科医院・矯正歯科|土日診療

技工士さんを取り巻く環境

皆さんは「歯科技工士」という職業をご存じでしょうか? 歯科技工士さんは、私たち歯科医院での治療に欠かせない「詰め物」「かぶせ物」「入れ歯」「矯正装置」などを実際に作ってくださる、いわば“影の立役者”です。患者さんのお口の中で長く機能する大切なものを、一つひとつ丁寧に仕上げてくださっています。

技工士の待遇に関するニュース

ところが最近、歯科技工士さんに関するニュースを耳にする機会が増えました。待遇の問題、社会的な立ち位置、そして「なり手不足」です。実はこれは突然始まった話ではなく、私自身が大学院生だった10年ほど前から、すでに技工士学校の入学者数が少ないことは肌で感じていました。また、技工所を経営される方から「仕事はあるけれど収入が少ない」「長時間の作業や環境の問題もあって、体を壊してしまう」といったお話も何度も伺ってきました。

日々の診療で感じること

歯科医院を運営している今、改めてその影響を身近に感じています。たとえば「入れ歯」をお願いできる技工所の数が減り、完成までにかかる日数が延びています。つい先日も、長くお付き合いしていた技工所が閉業されてしまい、慌てて新しい技工所を探すことになりました。患者さんをお待たせしないために奔走するのですが、それほど「入れ歯」を作ってくださる技工士さんが少なくなっているのです。

若い世代の関心

近年はデジタル技術の導入が進み、若い技工士さんの多くは新しいデジタル分野に関心を持つ傾向があります。CAD/CAMやミリング、3Dプリンター、メタルプリンターを使ったデジタル技工は新しい分野として注目されており、若い世代の多くはそちらに魅力を感じています。

保険の技工物が抱える問題点

しかし、保険の義歯は、今でも一つ一つ手作業での工程がほとんどです。熟練した技術と根気、そして時間のかかる工程と作業が求められます。従来型の入れ歯や被せ物の製作はどうしても敬遠されがちな面があり、担い手不足に拍車をかけているのです。
保険の入れ歯や基本的なかぶせ物は、まだまだ手作業による精密な仕上げが欠かせません。ここにこそ、患者さんに直結する大切な役割があります。若い技工士さんにとっては、地道な作業に感じるかもしれませんが、患者さんが「しっかり噛める」「自然に笑える」と喜ばれる瞬間を支えているのは、まさにその努力なのです。
また近年では「睡眠時無呼吸症候群」の治療に用いる口腔内装置の一部に関しては、作っていただける技工所もごく限られています。作製には高度な技術と多くの手間が必要ですが、保険診療で得られる報酬だけではとても見合わず、歯科医院としても赤字になってしまうケースも少なくありません。こうした分野にデジタルで対応しようという試みもあるのですが、診療報酬体制などの社会的な制度も確立していないのも事実です。

技工士として働くことの課題

将来の見通し

さらに若い世代の技工士さんの現状を見ると、もう一つの課題が浮かび上がります。それは「働き方」や「将来性」に対する不安です。長時間労働や低賃金といったイメージが根強く、敬遠されてしまうばかりでなく、せっかく資格を取っても数年で離職してしまう方も少なくありません。

技工士の立場

歯科医師と技工士さんの関係にも課題があります。医院側としては「できるだけ早く、安く、きれいに仕上げてほしい」という気持ちがある一方で、技工士さんにとってはそれが大きな負担となることもあります。つまり、私たちが無理をお願いしてしまえばするほど、技工士さんの仕事環境が厳しくなってしまうという難しさがあるのです。

これからの歯科医師ー歯科技工士の関係

歯科技工士さんの存在はかけがえのないものです。どんなに最新の治療器具やデジタル技術が発展しても、特に保険の義歯のように「手の技」が中心の分野では、技工士さんの経験と感覚に支えられています。患者さんが「よく噛めるようになった」「見た目が自然でうれしい」と笑顔を見せてくださる背景には、必ず技工士さんの努力があります。
これから先、歯科医療がよりよい形で続いていくためには、保険診療の体制が改善していくことだけでなく、歯科技工士さんとの関係を大切にし、互いに理解し合うことが欠かせません。当院でも、一つひとつの技工物に込められた技工士さんの想いをしっかり受け止め、患者さんへ最良の形で届けていきたいと思っています。
皆さんが安心して治療を受けられるのは、私たち歯科医師だけでなく、歯科技工士さんとの二人三脚の努力のおかげです。これからも、そんな「縁の下の力持ち」の存在をぜひ知っていただけたらうれしいです。