
マネージャーとしての仕事――城北歯科のチームづくりの裏側
城北歯科を「組織」として本格的に整えはじめて、もう3年が経ちました。
それまでは、院長である私を除いて、スタッフは皆フラットな横並びの関係。人数が少ないうちは、このスタイルのほうが機動力があり、コミュニケーションも円滑でした。しかし、スタッフの人数が増えるにつれ、連携の行き違いや業務の分担が曖昧になることも増え、効率の悪さに頭を悩ませるようになりました。
チーフ制の導入
そこで思い切って、院内をいくつかの「部署」に分け、それぞれにチーフ(マネージャー)を配置する体制に変えました。これにより、「誰が何を担うのか」が見えやすくなり、スタッフの間でも目的意識が高まってきたように感じています。
チーフがぶつかる壁
とはいえ、この試みは当院にとって初めてのチャレンジ。当然のことながら、最初からすべてが順調だったわけではありません。
よくぶつかる壁のひとつが、「プレイヤー」と「マネージャー」の違いの理解です。たとえば、衛生士がチーフになると、それまで通りの臨床業務に加えて、衛生士チーム全体の動きを俯瞰する力や、メンバーの業務配分、育成といった“管理する目線”が求められます。しかし、多くのスタッフにとって、こうしたマネジメント業務は初体験。最初は戸惑いや混乱があって当然でした。
中には、「私は衛生士なので、これは私の仕事ではありません」と怒って口にする場面もありました。それもそのはず、これまで「自分の仕事をきちんとこなす」ことを評価されてきた人が、急に「チーム全体を見る立場」となれば、誰しもギャップを感じてしまうものです。
仕事をまかせるという壁
また、管理職として成長していく中で、もう一つ難しい点は「仕事を任せること」。とくにベテランのスタッフほど、自分がやった方が早い、確実、と思ってしまいがちです。でも、チームを育てていくためには、思い切って後輩に任せてみる勇気も必要。失敗を恐れず、まずはやらせてみるというスタンスが、チーフとしての大きな一歩なのだと思います。そして思いの外、後輩たちは成長しています。
デジタルの壁
もう一点、大きなハードルとなるのが「デジタル業務」です。マネージャーになると、どうしてもデスクワークの比重が増えます。パソコンでの記録管理や、データの共有、院内資料の作成、SNSでの情報発信など、多くの作業がデジタルを通して行われます。しかし、これは臨床の延長線上にはない作業なので、かなり抵抗感をもつスタッフも少なくありません。打ち合わせの議事録ひとつとっても、「Wordってなに?」「議事録ってなに?」という声が出てくるのが現実です。
それでも、こうした課題に一つずつ向き合いながら、城北歯科のチームは確実に成長してきていると思います。
さらに学んだことは、適材適所に人員を配置する必要性です。苦手を克服するのではなくて、できる人へ依頼して、自分は自分のできることを伸ばす仕組みになるように常に目を見張る必要があります。
マネージャーが育てば、組織が変わり、組織が変われば、もっと良い医療を提供できるようになる。そう信じて、これからも「人を育てる」ことにしっかりと時間と手間をかけていきたいと思っています。