糖尿病と歯周病の関係
糖尿病と歯周病には密接な関係があることをご存じでしょうか?
日本糖尿病学会は2019年診療ガイドラインにおいて、「2型糖尿病の患者さんは歯周病治療を受けることを強く推奨する」と正式に宣言しています。
糖尿病とは?
糖尿病は血糖値が慢性的に高くなる病気で、進行すると全身にさまざまな症状を引き起こします。例えば、目の血管が障害されることで起こる「糖尿病網膜症」、腎臓の機能が低下する「糖尿病腎症」、手足のしびれや感覚の鈍さを感じる「糖尿病神経障害」などが代表的です。また、体の免疫機能も低下するため、感染症にかかりやすくなり、傷が治りにくくなることもあります。これにより、口腔内の健康にも大きな影響を与え、歯周病が悪化しやすくなると言われています。
歯周病とは?
歯周病とは、歯を支える歯茎や骨などの組織が炎症を起こす病気です。最初は歯茎に炎症が起こる「歯肉炎」から始まり、進行すると歯を支える骨が破壊され、歯が抜けてしまうこともあります。主な原因は、歯と歯茎の境目にたまるプラーク(歯垢)で、この中に含まれる歯周病細菌が炎症を引き起こします。
糖尿病と歯周病の関係
歯周病はお口の中だけでなく、全身に影響を与える病気なのです。歯周病によって発生する炎症は、全身に悪影響を及ぼします。具体的には、歯周病が原因で炎症性サイトカインという物質が分泌され、これが血流に乗って全身に広がります。このサイトカインがインスリンの働きを妨げ、血糖値が下がりにくくなり、結果的に血糖値が慢性的に高くなってしまうのです。
しかし、歯科医院で定期的にお口のケアを続けることで、歯周病菌が減り、歯周病の症状が改善します。そうなると、炎症性サイトカインの分泌も減少し、インスリンが正常に働くようになります。これにより、血糖値が下がり、糖尿病の症状に良い影響を与えることがわかっています。
最近の動向:医科と歯科の連携強化
近年、糖尿病に関する医科と歯科の情報共有体制の確立も進められています。特に、歯科においても歯周病治療時に糖尿病を管理する項目が新たに追加されました。これにより、歯科医師が糖尿病患者の治療を行う際に、医科クリニックと緊密に連携することが求められています。地域全体で糖尿病と歯周病を総合的に管理し、患者さんの健康を支える取り組みが強化されているのです。
予防と対策
糖尿病の患者さんにとって、歯周病を予防することは非常に重要です。まずは、毎日の適切な歯磨きやデンタルフロスの使用を心がけ、プラークをしっかりと取り除くことが大切です。また、定期的な歯科検診を受けて、歯と歯茎の健康状態を確認してもらいましょう。特に糖尿病の方は、早期発見・早期治療が歯周病の進行を防ぐ鍵となります。
さらに、糖尿病のコントロールもしっかり行うことが重要です。適切な食事や運動、医師の指導に基づいた治療を続けることで、血糖値を安定させ、歯周病のリスクを減らすことができます。例えば、歯周病治療によってヘモグロビンA1cの値が改善されることが報告されており、これは糖尿病の薬の一剤分に匹敵する効果です.
おわりに
糖尿病と歯周病は、切っても切れない関係にあります。しかし、日々のケアと適切な治療を行うことで、どちらもコントロールすることが可能です。もし糖尿病をお持ちであれば、歯科医院での定期的なチェックを受けることをお勧めします。さらに、医科と歯科が連携して地域全体であなたの健康をサポートしていますので、安心して相談してください。健康な歯と体を保つために、ぜひご自身の歯と歯茎のケアを大切にしてください。