予防治療・メインテナンス
予防治療・メインテナンス
なぜ予防治療なのでしょうか?
WHOの調査によると口腔疾患を持っている人の数は世界で約35億人。日本人も永久歯の虫歯は約30%(4000万人)であり、30代以上の世代では約50%が歯周病に罹患していると言われています。
しかし、歯と口の健康や予防ケアの重要性を説いても、「命に関わるものではない」と勝手に判断されて軽んじられるケースも少なくありません。口腔機能低下の問題は決して口の問題だけではなく、歯の残存本数が少ない人ほど健康寿命が短いという研究データも報告されています。さらに、歯周病は単なる口腔疾患ではなくて、糖尿病、認知症、虚血性疾患をはじめとする全身疾患につながる「病気の入り口」として注目されています。
人生100年時代を健康に生き抜くためにはどうしたらよいのでしょうか。それはアクティブに人生を楽しむことがポイントなのです。この楽しむことこそ、口腔機能をよく使い、障害を予防する最適な方法なのです。口には、摂食・嚥下、味わう、しゃべる、表情をつくるなどの機能があります。また、口は免疫セキュリティの入り口と言われ、唾液を含め生体防御の多くの機能を持っています。この機能を存分に使って人や社会とのつながりをもつことが大切なのです。
つまり、友人との会話が摂食嚥下機能を鍛え、唾液分泌を促進し、健康寿命の延長を助けてくれます。30代以上の約50%が歯周炎に罹患しているといいましたが、将来の健康は「今のケア」にかかっているのです。
また、口腔に関する機能が低下しつつある状態のことを「オーラルフレイル」と言います。このオーラルフレイルは、全身のフレイルにつながり、要介護や健康寿命を損なうリスクを高めます。特に、オーラルフレイルの人が抱えるリスクは、口腔健常者と比較して要介護認定となるリスクが2.4倍、総死亡リスクが2.1倍ということも明らかになっています。さらに、オーラルフレイルや残存歯数の低下があると、社会的孤立を招く要因になることもわかってきています。
このように虫歯、歯周病だけではなく口腔機能全体の予防をすることで健康寿命を伸ばすことが可能になります。そしてこの将来の健康は「今のケア」にかかっているのです。
さあ、あなたも予防歯科始めませんか。
食生活、歯磨き、フッ素、定期検診の4つが大切です。
虫歯は、一言で表すと「虫歯菌の感染による歯の病気」なのですが、生活習慣病的な側面がとても強いのも事実です。甘いもの、炭水化物に偏る食生活、歯磨きや歯科検診を怠るなどの適切な口腔ケアができていないなどの生活習慣が、口腔内の虫歯菌の数を増殖させて、虫歯になりやすい状況を生み出します。
虫歯菌は、甘いもの(糖)を餌にして酸を産生します。この酸がたくさん発生することで歯が溶けてしまう結果、虫歯になります。虫歯菌が増殖してプラーク(歯垢)が形成されると、そのプラーク内で酸がどんどん産生されてしまい、虫歯もどんどん大きくなっていきます。このプラークを作らないこと、または歯磨きで毎日こすり落とすことで、虫歯になるリスクをかなり低くすることができるのです。
2001年にギネスブックに登録された「全世界で最も蔓延した病気」とは何かご存知でしょうか?実は、それが「歯周病」なのです。歯周病とは、歯周組織に起こる疾患の総称であり、細菌感染によって歯肉だけが炎症を起こしている状態を「歯肉炎」、さらに炎症が拡大し歯を支える骨(歯槽骨)まで炎症が起きている状態を「歯周炎」と言います。細菌に由来する毒素や細胞の炎症を誘発する物質(炎症性サイトカイン)が血流に乗って全身へ流れ、さまざまな疾患の悪化を招く原因になっています。この状態になると、歯科医院での歯周病治療やメンテナンスを継続しない限り、病状は確実に進行し続けてしまいます。動脈硬化、虚血性心疾患などの循環器疾患、糖尿病、認知症、肝機能疾患、といった疾患と歯周病の関連を裏付ける研究結果が多数報告されています。歯科検診を受けることが、病気予防に重要な役割を果たすことがわかってきているため、「国民皆歯科検診」というのも、このような背景の中から始まりました。
基本的に、溶けてしまった歯や骨は元に戻すことはできません。そのために、口の健康を保つためには、治療よりも病気になる前の日々のケア(予防)が大切になってきます。
セルフケアの基本は、ブラッシングです。歯ブラシで適切なケアを適切なタイミング、頻度で行うことが必要です。
以下にブラッシングのポイントを記載します。
口腔疾患の予防は、日常のセルフケアだけでは限界があります。歯石についてはブラッシングでは落とすことができないため、定期的に歯科医院を訪れクリーニングや健診を受けることが大切です。日本歯科医師会の調査(歯科医療に関する生活者調査2020年)によると、調査対象者の52.7%が歯科医院受診を先延ばしにしており、その一方で76.6%はもっと早く健診や受診をしておけばよかったと後悔している結果が出ています。口腔健康管理は、全身の管理と同様に継続的に診てもらえる環境が望ましいと言えます。相談のしやすや、治療に必要な専門分野などご自身にあるかかりつけ歯科医院を見つけることが大切です。
歯科での虫歯予防の中心は定期的な歯科検診です。フッ素塗布や口腔内診査、歯垢や歯石の除去(PMTC)、歯磨き指導などを行います。
生まれたての赤ちゃんのお口には虫歯菌や歯周病菌はいません。生活習慣や食生活、家庭での口腔ケア(仕上げ磨き)を行うことで、虫歯菌などが増えていかないような口腔環境を作っていくことが大切です。
ご家庭でのセルフケアがとても大切なのですが、お子様の場合はお口のスキンシップを通してお子様に虫歯菌がうつることがあります。例えば、お箸、スプーンなどの食具、離乳食の際の咬み与えなども原因になることがあります。虫歯菌のリスクを減らすためにも、両親、兄弟姉妹、祖父母などの口腔環境を整えておくこともとても大切です。お子様とご一緒に歯科検診やブラッシング指導を受けるのもおすすめです。
お母さんに出産前後の歯の健康についての知識を身に着けてもらい、赤ちゃんの虫歯を予防し健康的な口腔環境を確立することが目標です。また、妊娠すると、つわりによって歯磨きがしにくくなり虫歯になるリスクが高まります。妊産婦の歯の予防ではそうした知識を知ってもらい、必要であれば出産前に虫歯や歯周病の治療を実施します。母親に虫歯がある子どもとない子どもを比較すると、母親に虫歯がある子どもの方が虫歯発生率が圧倒的に高いことがわかっています。つまり生まれてくるお子様のお口は、ご両親の生活習慣やお口の中の健康状態からの影響を受けやすいということです。また、大人になった時の虫歯のかかりやすさは、子どものうちに虫歯にかかったかどうかが関係しているという報告もあります。
さらに、近年、妊娠中の歯周病は早産および低体重児出産へのリスクが高まることがわかってきました。母子の健康及びその後の口腔環境の構築のためにも、ぜひ妊産婦検診を受診してください。