
ジャパンオーラルヘルス学会に出席してまいりました
開催地は聖路加大学。学会のテーマは「大災害時のオーラルヘルスを考察する」という、私たち歯科医療に携わる者にとっても重要な内容でした。
特別講演では、聖路加病院院長の先生から、30年前のあの「地下鉄サリン事件」当時の貴重な記録映像を見せていただきながら、病院がどのように救急対応を行ったのか、そして混乱の中で何を学び、それを現在の医療体制にどのように活かしているのかというお話を伺いました。原因物質がサリンだと判明する前から、外来診療を止めて次々に搬送される患者さんへ対応された医療従事者のみなさんの姿には、ただただ頭が下がる思いでした。 まだ「トリアージ」という考え方が一般化していなかった30年前、医療現場がどれほど混乱の中で最善を尽くしたのか、その一端を感じることができました。
また、能登半島地震の際に震度7を体験しながら、病院でのトリアージや避難所での医療支援に携わった先生のお話も大変印象深いものでした。私たち歯科医師は、災害時の医療の最前線に立つことは少ないかもしれません。しかし、講演を聞きながら「歯科医として何ができるのか?」と自分の役割を改めて考えさせられました。災害時、歯科医ができることは 「食べることを支える」こと、そして 「肺炎を防ぐこと(口腔ケア)」 の2つなのではないかと、改めて感じました。
人以食為光
人は食を以て光と為す
食べることは生きる力そのものです。義歯の不具合やお口の痛みがあると、被災生活の中で十分に栄養を取れず、体力の低下にもつながります。また、避難所生活では衛生環境が整わず、口腔内が不潔になりやすく、高齢者の誤嚥性肺炎が大きなリスクとなります。 そのため、お口をきれいに保つサポートや、噛む・飲み込む力を支えるケアは、災害時だからこそ重要なのです。
今回の学会を通して、「もし自分がその場にいたら何ができるか?」を真剣に考えるきっかけになりました。日々の診療とは違う視点で、自分の専門性を社会に役立てられる場面があることを再認識し、身の引き締まる思いでした。
これからも、災害時にも皆さまのお口の健康を守れるよう、日常からのサポートと備えを大切にしていきたいと思います。学んだことを日々の診療にも活かしながら、地域の皆さまに安心していただける歯科医院を目指してまいります。







