
歯科でみつかる粘膜の疾患
こんにちは。今日は、歯科医院でときどき見つかる「お口の粘膜の病気」について。
先日、定期的に通ってくださっている患者さんの歯ぐきを診察した時のこと。歯ぐきの一部に傷のような部分が見つかりました。ぱっと見た感じは「歯ブラシが強く当たってしまったのかな?」という印象でした。実際、歯ブラシの当て方によって歯ぐきに傷ができることはよくあります。そこで、その日は念のため写真を撮り、お薬を処方し、優しく磨くコツをお伝えして様子をみることにしました。
次の来院時には傷はかなり良くなっていたのですが、さらにしばらくしてからまた炎症が強くなってしまいました。ちょっと気になる経過だったので、口腔外科の専門の先生にも診てもらうことにしました。
口腔外科の先生の診察によると、「皮膚が剥がれやすい現象(ニコルスキー現象)」が見られるとのことでした。ニコルスキー現象というのは、皮膚や粘膜の表面がちょっとした刺激で剥がれてしまう状態をいいます。これは、普通の歯ぐきの傷とは違い、体の中で何らかの異常が起きているサインであることが多いそうです。ちょっとさわるだけで粘膜が剥がれてくるので、見た目的にはとても痛そうなのですが、あまり症状がないことも特徴です。 今回は、さらに詳しく調べてもらうために、総合病院の口腔外科に紹介させていただくこととしました。
こうした症状はとても珍しく、私自身も学生のころに教科書で勉強したことはありましたが、実際に診察の現場で経験するのは初めてでした。
歯科医院では、粘膜の変化にも注意が必要
歯科医院というと「むし歯」や「歯周病」の治療が中心と思われがちですが、実はお口の中の粘膜(歯ぐき、ほほの内側、舌、くちびるなど)に現れる病気を見つけることも大切な役割です。お口の粘膜は、体の他の部分の病気が最初に現れる場所になることもあります。たとえば、自己免疫の異常、ウイルス感染、血液の病気、などの所見や症状が粘膜に現れることもあります。
歯科医師は日々の診療の中で「いつもと違うかな?」という小さなサインを見逃さないように心がけています。そして、必要があれば専門の先生方と連携しながら診断や治療を進めています。
お口の中は自分ではなかなか見えにくい場所ですし、多少の違和感があってもつい放置してしまいがちです。でも、たまにでいいので鏡でお口の中全体をチェックしてみるのもおすすめです。もし、白い斑点、赤い腫れ、治りにくい傷などがあった場合は、早めに歯科医院で相談してください。早めの受診が安心につながります。
これからも、私たちはむし歯や歯周病だけでなく、粘膜の小さな変化も見逃さないよう、患者さんの健康をサポートしていきたいと思います。