過去と現在の術前シミュレーションの違い
矯正治療を行う際、手術前の診断やシミュレーションを行うために「予測模型」というものを作成します。これにより、歯の移動や術後の状態を正確に把握し、治療計画を立てることができます。この予測模型の作成方法は、私が大学で学んでいた頃と現在では大きく進化しています。
石膏模型での予測模型作成
大学で学んでいた頃、予測模型を作成するにはまず石膏模型を複製し、上下すべての歯を専用のノコギリで一つひとつ切断していきました。その後、歯茎の部分をワックスに置き換えて、歯を移動させるシミュレーションを行いました。この方法は非常に手間がかかり、徹夜作業になることもしばしば。完成までに2〜3日かかるのが一般的でした。
さらに、手作業で行うため、細かい調整や正確さを追求するには技術と集中力が必要で、大変な労力を要する工程でした。完成した模型は達成感がある反面、今振り返ると「もっと効率的な方法があれば…」と感じてしまいます。
デジタル技術による予測模型作成
現在では、デジタル技術のおかげで予測模型の作成が驚くほど簡単になりました。3Dスキャナーを用いて歯列をデジタルデータとして取得し、そのデータを専用ソフトで処理することで、わずか15分程度で予測シミュレーションが完了します。以前は数日かけて行っていた作業が、たったの数分で終わるのです。
さらに、このシミュレーションデータを3Dプリンターで模型として出力することも可能です。例えば、帰宅前に3Dプリンターを起動しておけば、翌朝には高精度な予測模型が完成しています。こうした技術の進化により、精度は向上しつつ、時間や労力が大幅に削減されました。
矯正歯科技工の革命
デジタル技術の進化は、矯正歯科技工におけるちょっとした革命です。時間や労力が節約できるだけでなく、正確さも向上しています。これにより、患者さんに提供する治療の質がさらに高まり、治療計画の精度も飛躍的に向上しました。
技術革新によって私たちの仕事の方法は大きく変わりつつありますが、これからも新しい技術を取り入れながら、患者さんにとって最善の治療を提供していきたいと考えています。また、このような技術革新は、歯科技工士さんが抱えているいくつかの問題を解決する糸口になるのかもしれないと思い、若干の期待を抱いていることです。