
睡眠と歯科の関係
睡眠と歯科の関係
最近、「睡眠の質」という言葉をよく耳にするようになりました。「睡眠負債」「深い眠り」「レム睡眠とノンレム睡眠」などのキーワードがメディアで取り上げられ、「睡眠専門外来」などの診療科も登場しています。 そんな中で、「歯科」と「睡眠」が実は深く関係しているということをご存じでしょうか?
私たち歯科医療の現場でも、近年「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」への関心が高まっています。この病気は、眠っている間に何度も呼吸が止まってしまう疾患で、放置するとさまざまな健康リスクにつながります。そして、その治療の一部に歯科が関わることがあるのです。
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に呼吸が繰り返し止まったり、呼吸の流れが弱くなったりする病気です。多くは「閉塞性」と呼ばれるタイプで、喉や舌の周囲の筋肉がゆるむことにより、気道が一時的にふさがれることで起こります。 代表的な症状は「大きないびき」や「日中の強い眠気」。さらに、集中力の低下や記憶力の低下、高血圧、糖尿病、心筋梗塞、脳卒中など、深刻な合併症のリスクもあります。
実際には、ご本人よりもご家族が「寝ているときに息が止まっている気がする」「いびきがすごい」と気づくことが多く、無意識のうちに進行していることも珍しくありません。
この睡眠時無呼吸症候群の診断と治療方針の決定は、内科や耳鼻科、脳神経、精神科などの「医科」が担当します。専門の医療機関では、PSGと呼ばれる検査を行い、睡眠中の呼吸状態や脳波、心拍、血中酸素濃度などを詳しく記録します。
歯科はこの流れの中で、治療のひとつとして「マウスピース(口腔内装置)」の作製・提供という役割を担います。つまり、医師による診断のもと、歯科が治療の一部を担当するという「医科歯科連携」が非常に重要なのです。
歯科では、「軽度から中等度の閉塞型睡眠時無呼吸症候群」と診断された方や、「CPAP(シーパップ:鼻に空気を送る機械)」が使いづらい方などに対して、マウスピースによる治療をご提案することができます。
患者さんの歯や顎、かみ合わせの状態をしっかりと診査した上で、睡眠中に装着する専用のマウスピースを作製します。これは保険適用が可能な治療であり、正しく使用することで症状の緩和が期待できます。
睡眠時無呼吸症候群に用いられるマウスピース(正式には「口腔内装置(OSAS)」)は、睡眠中に下あごを少し前に出すような形で保持する設計になっています。これにより、舌の付け根や軟口蓋が気道をふさぐのを防ぎ、呼吸をスムーズに保つのです。
当院では、患者さん一人ひとりのお口の形や顎の動きに合わせて、精密な型取りと調整を行い、より快適で効果的な装置をお作りしています。
「いびきが気になる」「日中の眠気がひどい」「家族に呼吸が止まっていると言われた」などのサインがある方は、まずは医科での検査を受けていただくことが第一歩です。そのうえで、マウスピースが適応と診断された場合には、私たち歯科がサポートいたします。
「睡眠と歯科」- 一見、関係のなさそうな二つの分野ですが、実は密接につながっています。睡眠の質が全身の健康に深く影響することがわかってきた今、歯科としてもその改善の一助になれることがあるのです。
いびきや睡眠中の無呼吸がある方、あるいはそれを心配されているご家族の方へ。 まずは一度、専門医による検査を受けてみてください。そして、もしマウスピース治療が選択肢のひとつとなった場合には、私たち歯科が全力でサポートいたします。
質の高い睡眠は、健やかな毎日を支える大切な柱です。歯科ができるサポート、ぜひご相談ください。